飯豊連峰 杁差岳(1,636.4m) 頼母木山(1,730.0m)で敗退

下越山岳会 平成19年度3月会山行(A山行) 

実施期間 平成19年3月24日(土)〜同25日(日)
参加者
本隊  CL:JEφPJY(藤井) さん、SL&担当JIφOII(田邊)さん、JJφNEN(石井さん)、中村さん、椎谷さん、JJφLTQ(私)
24日サポート  JIφHNC(若月さん)、小野さん
25日サポート(迎え)  JJφLTK(小林稔さん)

GPSLOG 24日15時天気図 24日21時天気図 25日09時天気図 24日15時衛星写真
24日21時衛星写真 25日09時衛星写真 出発前民宿奥川入荘前 取付手前のデブリ 西俣ノ峰付近の雪庇
西俣ノ峰の少し先 枯松峰から進行方向 中村さん 枯松峰を振り返る 頼母木山のお地蔵さん

天気図、気象衛星画像は気象庁のHPより

行き先 飯豊連峰 杁差岳(1,636.4m)西俣ノ峰、頼母木山ルート
天 候  3月24日 晴れ後曇り夕方から雨、夜は暴風雨
      3月25日 雨
気 温  3月24日 −1.6℃〜+13.1℃
      3月25日 +1.7℃〜+7.0℃
(観測地 山形県小国町)

ウインドプロファイラ(観測地 酒田)
3月24日15:00
1km  SW 10M
2km  SW 12M
3km  SW 16M
4km   W 17M
5km   W 26M

3月24日21:00
1km SSW 15M
2km  SW 19M
3km WSW 29M
4km WSW 19M
5km WSW 25M

3月25日01:00
1km  SW 24M
2km WSW 32M
3km WSW 25M
4km WSW 25M
5km WSW 26M


3月25日09:00
1km WSS 11M
2km  SW 13M
3km WSW 22M
4km WSW 27M
5km  SW 30M


装 備      冬山テント泊基本装備
登はん用具   ピッケル・アイゼン
雪山用として  Wストック・スノーシュー
通信用具    アマチュア無線・携帯電話
ナビ用品  GPS 地図 コンパス マップポインター

防寒具  フリース・ダウンジャケット・アウターは合羽で代用・中厚ウールグローブ・オーバーミトン
その他  通常装備
飲み物  水 1.0L
食料品  両日を通じて日行動食は個人、その他共同食


コースタイム 事柄 備考
3月24日
05時15分 自宅発
05時30分 五十公野集合 出発  
06時45分 民宿奥川入荘着 
07時15分 奥川入荘発(308m)
07時25分 西俣ノ峰への取り付き(320m)  取付手前・・デブリ
08時00分 522ピーク(522m)
09時55分 西俣ノ峰(1,023.2m) デポ品回収、再パッキング重い・・・ 雪庇が出ているでも小さい
11時25分 枯松峰(1,184m) 雲が増えてきた。風が南から感じる。
13時25分 三匹穴のテン場到着(1,450m)   CL、中村さん、椎谷さんルート工作、SL、NEN、LTQテント設営
15時15分 概ねテントその他の設営完了
15時20分 偵察隊戻る  丁度この頃から風が吹き始める。小雪が舞う・・・風に拠って舞ったものかもしれない。
20時30分 就寝  19時頃から風が強まる(予想はSE、実際の風はSSW)
21時00分 この頃から5時間位暴風状態だった。 テントの破損が本当に心配だった。

3月25日
04時15分 起床  雨でテント内グチャグチャだ
06時48分 テント場発(1,450m)
07時10分 偽頼母木直下西から沢が入る特徴点(1,580m) 工作隊は正月よりやや東にルートをとる
07時24分 偽頼母木(1,675m) 雪が随分減っている。薮で稜頂は通過できない
07時40分 頼母木山(1,730m) 西風7m前後、視界50m、雨 LTKに無線下山を伝える
07時50分 頼母木山から下山開始
08時10分 テント場着  テント撤収、パッツキング
08時55分 テント場発(1,450m)
09時45分 枯松峰(1,184m)
10時50分 西俣ノ峰(1,023.2m) 薄陽も射してきたが相変わらずの雨。雪が重く柔らかい。
11時52分 522ピーク(522m) 雪が腐っていてスノーシューでも埋まる
12時27分 取付  後続でスノーシュー・ワカンを脱着したメンバーを待つ
12時50分 民宿奥川入荘着  入浴 休憩後帰途に着く。
15時15分 集合場所着 荷物確認後解散
15時30分  自宅着

移動データ
TP積算距離 14.0km
移動平均速 2.4km
全体平均速 1.2km
総上昇量 1,600m
GPSデータ

概要
私の住む新発田からとても印象的な山の一つに杁差岳がある。標高は1,636.4mと低いがボリュームのある山容と日本海からの距離が僅か30KMに満たない。そのため飯豊連峰南部より海からの季節風の影響をとても強く受ける。
そのためか、同じ飯豊連峰南部より森林限界の標高も低く僅か1,300M〜1,400M位でササか雪田草原となる。
その厳しい環境のため厳冬期に訪れることは困難である。そう、ここは日本のでも名だたる豪雪地である。厳冬期に一度荒れたら、10日〜2週間が冬型が緩まないことも希ではない。天候の安定するこの時期から比較的安全に訪れることが可能になってくる。
 その中でもイリ平尾根、デト平尾根は山形県小国町側から西俣ノ峰を経て上ノ境から東俣川へ降り渡渉して取付くこの両コースは杁差岳の積雪期のバリエーションルートとして私は以前から行きたいと思っていた。

今回、会山行で企画されたので準備を進めていた。ところが、3月11日からの寒波が季節外れのガンバリを見せて10日以上居座り山々に雪をもたらせた。3月17日、18日に2パーティーが偵察に入ったが西俣ノ峰直下で雪面に亀裂が入るなど、雪の不安定な状態であり会山行としては危険だという判断が下され、一般的なルートである頼母木山経由で杁差岳を目指すことになった。

3月24日(土)
目覚まし時計のアラームで目を覚まし、餅を食べながらインターネットでHPと天気予報を確認してメールを数通出して出かける。コンビニに寄り少し買い物をして集合場所へ。
集合場所では、本隊6名と日帰りサポートのJIφHNC(若月さん)、小野さんが揃い登山口にあたる民宿奥川入荘を目指す。
天気は良いが午後から崩れる予想で、夜には南東風が強く吹く感じだ。
横山さん宅へ担当のJIφOIIさんが挨拶行く。各々準備を進め共同装備を分配して重くなったザックを背負い出発する。

尾根の取付を目指すと、デブリが進路間際まで到達していた。サポートのHNCさんと本隊のNENさんが重い荷物を背負いながらグイグイと登る。522ピークまで登ると、一汗絞られた。気温が高いようだ。西俣ノ峰まで来ると雪が結構安定しているので上ノ境を降りることもできかも?等と話もでるが、明日の天候を考えると復路の問題もあり少しリスキーだ。
西俣ノ峰でデポ品(正月合宿時の残品)を回収してザックに収める。また、重くなった。中村さんのザックもナカナカ雰囲気が出ている。

西俣ノ峰から先に進むと雪庇が眼に入るが、やはり小さい。ボリュームというがスケールがイマイチ
空を見ると薄曇になってきた。西の空の黒っぽい雲が真っ白な杁差岳、鉾立峰を際立たせる。
行きたかったイリ平尾根を眼で追う。新潟側から見るたおやかな山容とは趣きが随分ことなり気持ち良くスッキリと切り立つ。
眺めていると何とかあの、フェイスは何とかならないかな?岩ならいざ知らず、多分、草付きでどうにもならない斜面だろう。などなど夢幻ごとを想像する。

枯松峰で大休止。気温が15℃もある。変な感じだ。HNCさんはオオドミ迄サポートで荷物を揚げましょうと、申し出てくれる。食事を摂っているHNCさん、食事を摂りここでHNCさんを待つ小野さんにお礼を云い我々は先行する。直にHNCさんが追いついてくる。早い。ドンドン進む、登る。

オオドミを過ぎ少し上に行った時チョットしたアクシデントがおこる。椎谷さんのザックに着けたピッケルが椎谷さんがザックを背負う時PJYさんの顔にHITした。幸い傷が浅く事なきを得たが僅かなタイミングで大事故になる可能性もあった。
ピッケルホルダーの使い方、担ぐ時の注意など基本的なことを考えさせられるアクシデントだった。
そんなことをしているうちに、HNCさんが三匹穴まで荷物を上げて下山してきた。
何となく、正月の風除ブロックの感じが残っていたよ。とのこと。
オオドミ迄と云いつつ、三匹穴まで上げて頂いたHNCさんに大感謝です。オオドミに私物を置いて、テントを先にテン場まで上げて再び私物を回収に行き、トータルでオオドミ〜三匹穴まで2往復は仕方ないところと考えていたので嬉しかったです。
助かりました。有難うございました。

三匹穴への登りを重い荷物に喘ぎながら進みテン場着。偵察班と設営班に別れ作業にかかる。是非!と志願の中村さん、椎谷さんを率いてPJYさんらが偵察班。OIIさん、NENさん私が設営班。
天気予報では南東風が強く吹きそうな感じだった。方向のイメージでは本山方向から。で正月とは逆向きに風除ブロックを設置する。テントの設営を終えて、全員のザックをテント内に納めて直ぐ偵察班が戻ってきた。

偵察班が戻ってきたのとほぼ同時に小雪が舞う。でも考えてみると強い風で雪が飛んできたのかもしれない。
各自、ザックの中から共同装備、私物を出して落ち着いたところで今日の頑張りに乾杯。
各自持ち寄りのツマミ、隠し酒で盃を重ねて食事を挟んで歌も出る。この頃になると風でテント押され始めた。

就寝後風がどんどん強まる。
会のテントのうち今回は通称サイトウ・テント(斉藤先生寄贈品)と云うスター・ドーム型テントを借受て使用したが高さ1.3M程の天井が寝ている顔面にまで潰されてくる。
そのうち、強風で雨が押し付けられるので、テントの外張り、テント生地から雨が染み出してきて、その水滴が風で煽られる度に顔に降りそそいでくる。シェラフカバーも直ぐにグチャグチャになる。ウトウトすると雨水が顔にあたり目が覚める。

突風と云うのは、何か物体のようなイメージだ。ダケカンバの森林限界ギリギリにテン場を設けているため、遠くの方でゴーッと音がして、少し間をおいて、ゴオ〜ンとテントを押し潰さんとテントに変形を加え十秒程度で通り過ぎる。その間、テントの隅に置いてあるザックが身体を押してくる。テント大丈夫かなあ?等と思う。その後、ユックリとテントの天が元の位置に持上る。

あまりにテントが変形するので、ポールが折れないか心配になってきた。ポールが折れるとテントが破ける可能性がある。その場合は、この夜中にテン場から北西側に大きな風紋があったのでその辺に穴を掘って朝まで震えるのかな?靴・合羽は何処だっけ?などと悪い考え事をしていた。時折、腕時計の気圧計を眺め、お〜い・・まだ下がるのか・・・
がっかりだ。等と思いながらウトウトする。ようやく落ち着いたのは午前3時に近くなっていた。
ウインドプロファイラデータは観測地酒田を示した。少し観測地と異なるが、真夜中に上空2km付近に強風域があったようで南西側
からだと、頼母木小屋の方角(当然見えない)から三匹穴の広い雪の斜面を駆け下る方角だ。
地形図から風の通り道をイメージすると、何となく南東でも、南西でも三匹穴のテン場付近が風の通り道のように見えてきた。
それでも、昔からテン場適地とされてきたのは、樹林帯の最上部で稜線までの行程が短いということだろう。
もし、森林限界の上なら今回の風には耐えられなかったかもしれない。
テン場適地にはそれなりの理由がある。いずれにしても、真夜中の強風は相当なものだった。




3月25日(日)
朝、寝不足の眼を擦るとテント中がビショビショで呆れる。雨風は落ち着いてきたが、まだ結構強い。しかし暖かい朝だ。食事を摂りながら、今日の行動を検討する、検討の結果、頼母木山で行動中止とした。食事を摂りながらCLと話をするとCLもテントの破損が気になっていたようだ。

テン場を出る。昨日積み上げた風除ブロックが驚く程小さくなっていた。
昨日の偵察班の標識を辿る、正月のルートやや東側に取っている。薮が随分でている。暖かく雨降りなので雪も柔らかい。ルート旗に導かれ登るが、偶に標識が遺失しているようだ。
偽頼母木を経て頼母木山。頼母木山々頂は雨だ。また、山頂の標柱、地蔵付近には積雪は無い。しかし、これから通常の気温に戻れば、この雨を含んだ雪は氷化するだろう。その時はカチカチになるだろう。

LTKに無線を出す。感度は良好である。見通し距離はいいものだ。LTKに頼母木山々頂に到着した事、ここで敗退する事、現在の天候、昨晩の強風で皆寝不足であること。を伝え早々に下山する。下山は早い。20分ほどでテン場に戻る。

パッキングをしなおし、テントを撤収する。はたして、テントのポールの多くのパーツが曲がっていて交換が必要な状態だった。
やはりギリギリのところだったようだ。大量に水を吸った全てのものがイヤに重い。とりあえず、枯松峰を目指し降りる。
枯松峰で一息着ける。少し明るくなってきたがまだ雨は降り続く。樹の根元に土の出ているところには沢山のイワカガミの葉が艶々とした姿を見せていた。
杁差岳の1,300m位のラインまで見えるが、昨日とは異なり、斜面はズタズタに切れている。大分動いた感じだ。イリ平尾根も一箇所悪い切れ方をしている。斜面には逃げられないし、乗っ越すにはかなりの手間だろう。
あちらこちらで、雪崩の跡が見える。
下山ルートの尾根の周辺を見渡すとマンサクの花が咲いていた。どうした訳か昨年は殆ど見かけることがなかったが
今年は観ることができた。

気温が高く雪が重くぬかるむ。522ピークに近づくと沢音が大きく聞こえる。融雪が進んでいるのだろう。重荷と柔らかい雪に難渋しながら取り付きまでおりる。上をみると一度、ワカン、スノーシューを外したメンバーが再び装着したようで少しの時間があるので雪を掘ってみる。上部のザラメ雪の下に大量に水を含んだ湿雪の層が少し離れて2層ありその下はザラメ雪。
この2層のグチャグチャの層で滑りそうな感じだった。実際スノーシューの下、足元そのものが薄く滑る場面があった。

そのうち斜面を全員が降りてきて皆で奥川入荘に向かう。奥川入荘からこちらを見ている人がいるようだ。
近づくとLTKだった。

LTKの話しでは、今朝、能登半島で大地震があり新発田でも揺れたという。そうると、雪面の切れ目、多くの雪崩の跡は地震で
誘発されたものかもしれない。

LTKは6人でNENさんの車1台なので大変だろうと迎えに来てくれたのだった。助かりました。
民宿奥川入荘で入浴して少し休み帰途についた。

結果としては、イリ平に行けず、途中敗退という残念な結果だったけれど総合的には無理に突っ込まないでよかったと思うし
全員事故もなく無事下山できた事が一番です。

悪天候の中、安全に配慮した山行をリードしたCLのPJYさん、段取り偵察等で大変な労をお取り頂きましたSL&担当のOIIさん
お世話になりました。
入会後、歴の浅い我々3名を見守って頂き、NENさんありがとうございました。
サポートを頂きましたHNCさん、小野さん、LTK、有難うございました。

個人的には、しつこくイリ平は拘りたい。




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